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この門をくぐる者は(金沢旅行本編1)

 9月23日、金曜日、秋分の日の東京は台風到来の予感を孕みながらもなんとか曇天でとどまっていた。台風の進路予想は、ちょうど私が金沢を満喫しているときに東海や関東をなぞって通り過ぎていくようで、正に台風から逃れるような旅、太平洋側の皆さんが苦しんでいるときに私は日本海側でBANG!BANG!バカンス!なわけで、喉の違和感ではなく罪悪感を抱きながら、お昼過ぎに羽田空港へと向かった。

 飛行機の離陸時には雨がぱらついていて、雨雲を突っ切るように機体は上昇、窓の外の雲海を見ながら、久々の旅行らしい旅行にちむどんどんしていた。

 富士山が見えるはずの左の窓側の席を予約したが、あいにく雲に隠れて富士山は見えず、ただ、石川県に近づくにつれて視界が開け、眼下には小さくなった家々、田畑が見える。

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 羽田空港から小松空港までは僅か一時間の空の旅である。移動時間も旅の醍醐味だと思っている私には、もう少し機内での時間も欲しい、そんなことを考えていると、なんと小松空港滑走路上に鳥の群れが居座り、石川県上空を少々旋回する格好に。思わぬ形で希望が叶ったが、違う違うそうじゃそうじゃない。

 僅か10分程度のアディショナルタイムを経て、機体は小松空港に着陸。地方空港あるあるの、飛行機の離着陸の時間帯に合わせて市内へのバス時刻表が組まれているので、乗り遅れないようにバス停へ急ぐ。

 日本海に沈む夕日が見られるはずの進行方向向かって左側の席は埋まっていたため、仕方なく右側の席に座る。機内から富士山も見えないし、朝の占いではこの日の獅子座の座席運は最悪だと言われていたかもしれない。せめてラッキーアイテムぐらいチェックしておけばよかったか。道中、ふと左側を見ると、勝者越しの窓の外に赤く染まった日本海が見え、椅子取りゲームに負けてしまったことが悔やまれる。

 西陽を左から右に受け流す逆ムーディー勝山の状態で、その反対側の田舎の風景を見ながらバスに揺られること約40分、ようやく金沢駅に到着した。シミュレーションしたところ、新幹線のほうが金沢駅着が1時間ほど早かったのだが、JALマイレージを使用しての無料旅であり、多少のタイムロスには目をつぶった形である。目をつぶりすぎて富士山も夕日も見えなかったが。

 本来は、新幹線の車内で金沢到着のアナウンスを聴き、改札を抜け、もてなしドームをくぐって鼓門を拝むのが正式な形、正に正面玄関から金沢に入る形かもしれない。飛行機とバスを乗り継いで市内へ入るのは、どこか勝手口からお邪魔したようなそんな印象を受ける。それはともかく一度は断念した金沢旅行、ようやくここに来ることができたという喜びを胸に鼓門をくぐる。この門が、私の金沢観光の入口。振り返り、ライトアップされた鼓門を眺めると、金沢の伝統芸能である鼓をイメージして作られた門が青く染まっている。

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 タクシーで香林坊のホテルへ。チェックインの後、金沢の郷土料理ハントンライスのお店へ向かった。ハントンライスとは、ケチャップで味付けしたバターライスの上に白身魚のフライやエビフライが乗り、更にタルタルソースとケチャップがかかったさしずめ豪華なオムライスといったところ。グリルオーツカに到着すると、そこは三連休の金沢、長蛇の列である。最後尾のうんざりした顔の観光客、それ以上にうんざりした顔で最後尾につくべきか悩んだが、今回は諦め、仕方なく第2候補の金沢カレーのお店、ターバンカレーへ。もはやゴーゴーカレーで全国区になった味だが、金沢で食べる金沢カレーは格別。

 舌に絡みつくソースの味わいと、ようやくここに来られたという満足感で、私の金沢の旅が始まった。

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