日記なんかつけてみたりして

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水戸訪問(後編)

何かやらなければならないことがあったような気がしていたが、これだ。このブログの水戸訪問の後編を綴るのをすっかり放置していたのだった。三月下旬に訪問してから激動の四月が過ぎ去り、いざゴールデンウィークでじっくりこの日を振り返ろうと思っていた…

水戸訪問(前編)

三月の最終土曜日、お昼過ぎに私は常磐線特急ひたち11号に揺られていた。窓の外は曇天で、東京から千葉に入ろうかというところで窓に雨のラインがほぼ真横に入る。せっかく窓際の席を選んだのに車窓を楽しむことができない、と残念に思っていたが、雨はすぐ…

脂肪と郷土愛

ゆっくりと12月のあかりが灯りはじめ、慌ただしく踊る街を誰もが好きになる頃、オミクロン株の恐怖が襲いかかろうとしていた。年末年始に四年ぶりの帰省を企てる私の脳内では、奥田民生が「今年は久しぶり田舎に帰るから」とあの名曲の一節を口ずさんでいた…

ワクチンクエスト 〜そして多摩地区へ〜

新型コロナウイルスのワクチン接種券が届いたのは六月末のことだった。これで私は2021年の夏を心置きなく楽しむことができる。脳裏に浮かぶのは青い海、白い砂浜、打ち寄せる波。真夏の大冒険を思い描きながら、ワクチン予約開始の日時を待った。 私の住む都…

2021年1月1日、東京

もしもコロナがなかったら今頃旅行に行っているのに、もしもコロナがなかったら今頃友人と飲みに行っているのに、もしもコロナがなかったら……。思い返してみれば、たくさんの仮定法過去を並べた一年だった。そんな2020年の年の暮れも、私はあいも変わらず現…

本棚劇場

「やっぱり本は紙派ですか?」 読書好きの人から度々受けるそんな問いかけは「紙派です」という答えを期待しているようで、いつも僅かな後ろめたさを抱えながら「電子書籍派で……」と答える。読書好きは概して紙の本が好きなのだろうか、読書好きを自負してい…

京都音楽博覧会2020

今から遡ること5年、2015年の出来事といえば、世界各地でイスラム過激派のテロが発生し、ギリシャで金融危機が起こり、国内では安全保障関連法案が成立していたが、その裏でひっそりと私の京都音楽博覧会(以下「音博」)初参加という重大な出来事が起こって…

愛の不時着沼に不時着した話

三十代男性。間違いなくターゲット層からは外れているであろう。そんな勝手な思い込みから韓国ドラマに距離を取っていた。しかも、である。タイトルに「愛」なんて言葉が使われてしまっては、どうしても安っぽいメロドラマを想起してしまい、その距離は広が…

今年になって初めて「禍」という漢字を知った。「災い」や「災難」、「不幸な出来事」を表す漢字で、「わざわい」と入力すると変換される。当初、「渦中」の「渦」だと思って、ツイッターで思いっきり「コロナ渦」と投稿してしまい、慌てて訂正ツイートを入…

ドゥブロヴニク

最初にその写真を見たのがいつなのか、今となっては覚えていない。城壁に囲まれた場所にオレンジ色の屋根がひしめき合い、その向こうには海が広がっている。ジブリ作品に出てきそうな光景に私の目は奪われた。クロアチアのドゥブロヴニク、その場所の写真を…

香港

5時間15分。その時間はいつも「現地に着いたらやりたいこと」を脳内に列挙して気持ちを高ぶらせる時間だった。香港行きの旅客機の機内、普段なら眼前のスクリーンに表示される「目的地までの時間」の数字が小さくなるのを期待と共にちらちらと眺めているはず…

ナンバーガールとのこと

ナンバーガールが解散したときの記憶がないのは、それが当時の自分にとって重大な出来事ではなかったからであろう。大学の軽音楽部の友人に影響され一通りは聴いていたつもりであるが、解散前と解散後の私の生活になんら変化はなく、再結成前と再結成後の私…

令和元年のフットボール

子供の頃、よく何をして遊んでいたか。漫才の導入によくある感じで始まったこの記事には残念ながら笑いの要素はほとんどなく、笑いを求める読者諸君は今すぐこの記事から離れて、YouTubeで霜降り明星の漫才でも見て欲しい。同じくお笑い第七世代で言えば、ハ…

プロローグ(スペイン篇7)

仕事始めを明日に控え、時差ボケが抜ける気配はなく、私の心はまだバルセロナでピンチョスを頬張っていた。午後9時過ぎにテレビをつけてみると、そんな私の社会復帰をより困難にする番組が放送されていた。見てきたばかりの景観が画面に映し出される。『NHK…

アディオス(スペイン篇6)

もはや、語ることはそう多く残されていない。ホテルで最後の朝食をとり、部屋の窓から見えるサグラダ・ファミリアに後ろ髪を引かれながら寂寞のチェックアウト。12:15の飛行機の便に間に合うようにホテルを出た。最後は少し贅沢をして、ホテルが用意してくれ…

聖堂内部(スペイン篇5)

目的地の近くまで来ているものの、なかなかそこに入れずに翻弄され続ける、そんな小説をフランツ・カフカが書いていたような気がするが、私も同じような状況に陥っていた。サグラダ・ファミリア聖堂のすぐ近くに、しかも部屋から見えるほど近くに滞在してい…

マドリード(スペイン篇4)

一歩足を踏み入れたとき、これまでの部屋とは空気が変わったような気がした。目の前には人だかりができていて、人々の頭越しに巨大な絵の上部が見える。 人混みをゆっくりかき分けて、絵の前に進む。幕が少しずつ開いていくように、絵画の全貌が眼の前に現れ…

ガウディの天才性(スペイン篇3)

何かが破裂する音で目を覚ました。iPhoneを手繰り寄せ、時間を確認してその音の正体を把握する。ちょうど日付が変わったところ、どこかで花火が上がっているのだ。 年が変わる瞬間に特に執着心はなく、眠りについていた。所詮、人間が恣意的に決めた瞬間であ…

+8(スペイン篇2)

ホテルの朝食ビュッフェが好きだ。特に、その土地の特色が現れていて、種類が豊富であれば申し分ない。例えば、鹿児島のホテルでは鶏飯を食べ、台北のホテルでは点心を食べたことがあったが、朝からその地域の文化にどっぷり浸かることができる食事は旅行に…

サグラダ・ファミリア(スペイン篇1)

つくづく不思議な建物だと思う。1882年に着工し、未だなお建設中のサグラダ・ファミリア聖堂、それは「永遠に完成しないもの」の象徴のように扱われ、もしかしたら身近にある工期の長い建物がサグラダ・ファミリアに喩えられる場面に遭遇したことがあるかも…

くるりとのこと

それは、河合神社の片隅にひっそりと建っていた。「広さはわづかに方丈、高さは七尺がうち也。」と『方丈記』に記されている通り、わずか四畳半ほどで高さは約2m、茅葺き屋根の質素な小屋である。 京都で様々な災害を経験した『方丈記』の著者、鴨長明は、世…

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。 決して雪が降ることのない香港への旅行の記事をこのように書き始めるのが正しいか分からないが、私は香港へと向かう旅客機の中で川端康成『雪国』を読んでいた。 過去、タイのバンコクへ向かう機内では、そこが…

ミュンヘンは輝いていた(ドイツ篇1)

――ミュンヘンは輝いていた。この首都の晴れがましい広場や白い柱堂、昔ごのみの記念碑やバロック風の寺院、ほとばしる噴水や宮殿や遊園などの上には、青絹の空が照り渡りながらひろがっているし、そのひろやかな、明るい、緑で囲まれた、よく整った遠景は、…

帰省のはなし

旅客機は島の海岸線沿いを飛行していた。窓の外を見ると、けたたましい音で回転するプロペラの向こうに、海岸線に打ち寄せる波、区画整理された田畑が見える。徐々に高度を下げる旅客機、このまま田畑に突っ込むのではないかというところで突如アスファルト…

検索ちゃん(タイ篇5)

タイ旅行記五日目。この日は特に書くことなどないだろうと思っていた。というのもLCCの深夜便で現地を発ち、早朝に帰国するだけの日だからである。それでもこうして書いているからには何か旅の終わりに重大な出来事があったのか、はたまた特になかったけれど…

タイミング(タイ篇4)

朝起きて、顔を洗い、歯を磨き、トイレに行き、そんな毎朝のルーティーンに「カーテンを開いて対岸のワット・アルンを眺める」が加わるとしたら、どんなに素晴らしいことだろう、と思いながら昨日と同様にその行為を行う。二回目の今朝が最後、「ルーティー…

対岸の古寺(タイ篇3)

――バンコックは雨季だった。空気はいつも軽い雨滴を含んでいた。強い日ざしの中にも、しばしば雨滴が舞っていた。 三島由紀夫『豊饒の海(三)暁の寺』の書き出しを、ちょうど雨季のバンコクを訪れた自分の境遇と重ねたかったけれど、幸か不幸かこの日は雨の…

シンデレラボーイ(タイ篇2)

日本語が飛び交っていた。 ホテルの部屋から朝食会場に向かっている途中で国境をひょいと跨いでしまったのではないか、と思うほど多くの日本人宿泊客がビュッフェを前に目を輝かせている。日本の夏休みの時期に、日本語を話すスタッフを多く擁するここコスモ…

はじめの一兎(タイ篇1)

「お盆休みには地元に帰るの?」会社の先輩にそう訊かれ「いえ、帰りません」と答えたのは一ヶ月前だったか二ヶ月前だったか。しかし、定刻を少し過ぎて20時に成田空港を発った旅客機は私の地元の方角、南西へと飛んでいた。格安航空会社のタイガーエアの旅…

I'm lovin' it

数日前、SNSを見ていると、私のフライドポテト愛が試される記事が目に飛び込んできた。特に目新しいこともないように思えるこの記事を目にして、今、私は語ろうと思う。私とフライドポテトの、わざわざ一つの記事にするまでもないどうでもいい話を。 forbesj…