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ワクチンクエスト 〜そして多摩地区へ〜

 新型コロナウイルスのワクチン接種券が届いたのは六月末のことだった。これで私は2021年の夏を心置きなく楽しむことができる。脳裏に浮かぶのは青い海、白い砂浜、打ち寄せる波。真夏の大冒険を思い描きながら、ワクチン予約開始の日時を待った。

 私の住む都内某区の予約受付開始は7月26日(月)14:00で、接種開始はその翌日からであった。悠長に構えていたせいか、少し遅れて予約サイトを開いたときには「予約は満枠になりました」という一文。キャンセルが出たら予約できるかも、と思い、日をおいて何度もサイトに入ってみるものの、空きが全く出ない。予約できないままどんどん時間が経過していき、私の脳内にはシャ乱Q『シングルベッド』が流れ始める。

――恋は石ころよりもあふれてると思ってた なのにダイヤモンドより見つけられない

 はたけの感情的なギターソロがこんなにも胸に響いてくることがかつてあっただろうか。新型コロナウイルスのワクチンは誰でもすぐ接種できると思ってた、なのに全くその気配がない。

 八月に入り、新規感染者数が急増、デルタだかラムダだかシロタだかよく分からない株の名前を目にするようになる。謎の横文字は総じてこちらの恐怖心を煽ってくる。社内でも感染者がぱらぱらと出始め、夜、シングルベッドの上で恐れおののく私。

 早く打ちたい。

 もう居住する自治体に頼っていられず、なんとか早く打てる方法をSNSで模索し始めた。そんなとき、多摩地区でワクチン接種対象者を拡大したという情報を入手した。対象者について、ウェブサイトには以下のような記載があった。

――多摩島しょ地域、東京23区内で営業を行う中小企業の経営者、従業員、個人事業主等の方々が対象となります。(筆者注:現在は再び対象者が制限されている可能性があります)

 東京23区に対象を広げてくれたことに感謝する一方で、果たしてその後の条件に私は合致するのだろうか、という疑問を抱く。私が所属する企業は中小企業なのか。連結で考えると大企業に属するような気がするが、単体では職域接種の最低2000回(1000人×2回接種)に達していない。職域接種が行われなかった、すなわち中小企業という認識を持って、予約を進めようとしたが、もう一つ「営業を行う」という言葉も気になった。私は事務職であるが、これは会社として東京23区内で営業活動を行っていればよかろう。拡大解釈に次ぐ拡大解釈で、私はとにかく予約を完了したのである。

 サイトの申請フォームには属する企業名と電話番号を入力する欄があった。もし多摩地区のワクチン接種センターから「おたくの社員、対象者じゃありませんよ」と電話がかかってきたらどうしよう、という一抹の不安があったが、悪いのは私ではなく曖昧な基準、いや、なかなかワクチンを行き渡らせることができない自治体、いや、新型コロナ対策に後手後手の政府、いや、発生時に然るべき対策を行っていなかった某国……。RPGを進めるにつれて敵が強くなっていくように、考えれば考えるほど脳内の怒りの矛先も個人ではどうしようもないレベルになってしまうので考えるのをやめて、接種の日をおとなしく待つことにした。

 8月14日(土)の接種日、とりあえず五体満足、新型コロナウイルス未感染(恐らく)の状態でこの日を迎えられたことに喜びを感じる。接種会場へ向かう前に近所の薬局にワクチン接種後の解熱剤を求めたところ、カロナールを小分けにして処方してくれた。準備万全である。

 予約するに至る時間も長ければ、会場への移動時間も長かった。自宅から一時間かけて接種会場へ向かう。ワクチンを接種できるまでのあれこれが私にとっての真夏の大冒険、ワクチンクエストであった。

 多摩センターの駅で下車し、接種センターへ。予約時刻の15分前に入場し、受付、診察、接種、待機、退場と流れるように終えた。会場に着いてしまえばあっという間である。

 とりあえず一度目の接種が終わり、少しの安堵とともに会場を後にする。

 接種会場の近くにはサンリオピューロランドがあった。二度目の接種を終えた暁にはその開放感からここに足を踏み入れてしまいそうである。

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 そして接種から一日が経過。腕の痛みが気になるが、この記事を綴るほどの余裕はある。