日記なんかつけてみたりして

コメント歓迎期間中

検索ちゃん(タイ篇5)

タイ旅行記五日目。この日は特に書くことなどないだろうと思っていた。というのもLCCの深夜便で現地を発ち、早朝に帰国するだけの日だからである。それでもこうして書いているからには何か旅の終わりに重大な出来事があったのか、はたまた特になかったけれど無理やり捻りだして書いているのか。とにかく、狭い機内で私が目を覚ました瞬間から語ることにしよう。

空がうっすら明るくなっている時間帯だった。それなりに眠れたという感覚はあったが、疲労感は抜けていなかった。宿屋に泊まって全回復するドラクエの勇者になりたい、と思った瞬間、買ったばかりのニンテンドー3DSドラクエ11を持ってきていたことを思い出す。結局、旅が充実していたため電源を入れることがなかった。世界を救う気が全くないダメ勇者である。せめて到着までの数時間、冒険を進めようと思って電源を入れたその瞬間だった、隣に座っていたタイ人カップルの男性に声をかけられた。どうやら機内食を間違えて余分に注文していたようで、もらってくれないか、と言うのである。LCC機内食は有料のため、日本に着いてから食べればいいと注文していなかった私はありがたく頂戴することにした。

食後、隣に座るその男性と会話をした。日本に旅行で訪れ、東京と大阪を観光するのだという。秋葉原で買い物をするという男性にパソコンのパーツがどこで買えるのか訊かれたが、あまり詳しくない私は全く力になれず、ネットが使えれば……と臍を嚙む思いであった。また、お勧めの和食レストランを訊かれた。ジャパニーズフードというと、料亭のような場所を想像してしまい、果たして自分がお勧めできる場所はあるのだろうか、とこれまた途方に暮れてしまう。オフラインの私はかくも弱い存在だったのか、結局着陸後に「何か困ったことがあったら何でも訊いてくれ」とLINEのIDを教えて別れた。

都内へ向かうスカイライナーの車中、スマホをいじる。「和食」というと身構えてしまうけれど、ラーメンや焼肉も立派な日本食なのだ、と思い至る。LINE IDを一方的に伝えた状態であるので、連絡が来たら自分のお気に入りのお店を紹介してあげよう。私がタイで充実した時間を過ごしたように、ここ日本で充実した時間を過ごしてもらいたい。その一助となれば幸いである。そう思いながら、帰宅した私は、泥のように眠った。

秋葉原ヨドバシカメラにいる。このカードが欲しいのだが、新品ではなく、中古が欲しい」という内容のメッセージが入ったのは夕方である。中古のPCパーツなど門外漢であるが、今の私にはウェブが整った環境という巨大な後ろ盾があった。秋葉原で中古PCパーツが購入できる店舗を探し、地図付きで情報を送る。レストランの情報も伝えた。

使命を果たした私に迫りくる現実。私の非日常は彼らの非日常につながっていた。どうか無事カードが見つかりますように。

往生際悪く、非日常を楽しもうとする私はニンテンドー3DSの電源を入れる。冒険の旅は始まったばかりである。